一歳以下の子どものアトピーは、症状が順に出ることが多い。体の症状はあまり気にならないのが普通である。
食物アレルギーが原因なら、アレルゲンは血液に入って体中に回るはず。それなら症状は全身に出てもおかしくない。しかし、顔だけが赤くなるのはなぜだろう。答えは簡単。赤ちゃんは体をひっかけないからだ。アトピーはひっかいたり、こすれたりすることで湿疹ができる病気。ひっかかなければ悪くならないのだ。ダユアレルギーが原因のアトピーは、三歳すぎから出てくるのが普通で、汗や汚れがたまりやすくて皮膚がやおらかいひじの内側やひざの裏などに症状が出やすい。
あるとき、生後七ヵ月の男の子を抱っこしたお母さんがやってきた。
「ひどくなってしまいました」
いつになくお母さんの表情が暗い理由は、赤ちゃんの顔の状態にあった。ほっぺが真っ赤で黄色い汁が出ており、一部はカサブタになっている。この子は血液検査で卵と牛乳のアレルギーかおることがわかっていたが、離乳食では卵や牛乳を与えていないという。
「なぜ急にこんなになったのでしょう。昨日まではきれいだったのに」
「簡単なことですよ。こすったんでしょう」
悪化の原因は、この子が寝返りをうてるようになったことにあった。仰向けに寝かしても、自分でくるりと転かって、かゆいとゴシゴシとシーツに顔をこすりつけたりするようになる。それで、皮膚がすりきれてしまったのだ。つまり、表皮が破れた状態。火傷やすり傷で皮がペロリとむけたときのことを想像してもらえばわかるが、こうなると皮膚の防御体制は一挙に崩壊してしまう。細菌もつきやすい。だからひどい炎症で赤くなり、細菌感染を起こして黄色い膿がついてしまったのだ。
アトピーの子どもは上向きに寝かせるのがコツである。
「抱っこするときも顔をこすらないように、ずっと気をつけていたのに。昨晩はわたしが熟睡してしまったんですよね」
赤ちゃんの皮膚は弱い。「赤ちゃんの肌はすべすべしてきれい」と思うかもしれないが、まだ未熟な皮膚で角質層も薄い。だからあんなに透明感があるのだ。
アトピーの人の皮膚は、大人でも赤ちゃんと同じだと思ったほうがいい。アトピーは弱い皮膚の「ひっかき・こすれ病」なのである。
わきの下やひじの内側など、角質が薄い場所はちょっとこすったり汚れがたまっただけでも湿疹ができることがあるが、足の裏や手のひらは角質が厚いため、めったにトラブルを起こさない。角質が厚ければ皮膚のバリアが強いのだ。
さらに汗をかく夏は、細菌感染が起きやすく、汗で皮膚はふやけてやわらかくなる。ふやけた皮膚は水蜜桃みたいなもので、やわらかい布でこすっただけでも傷になる。だから、アトピーの人はとくに夏場のスキンケア(汗をかいたらシャワーで洗い、皮膚保護剤をこまめに塗ること)が重要なのだ。