アレルギー診断のムダな検査と必要な検査

ぼくは花粉症の人にアレルギーの検査をする気にはなかなかなれない。検査しなくても簡単に診断できる病気だからである。それどころか、医者でなくてもけっこう正確に診断できるかもしれない。同じような症状の人はまわりにいくらでもいるからだ。

スギ花粉の飛ぶ時期に一致してくしゃみ、鼻水、目のかゆみが出る。そんなとき隣に座っている同僚から、

「わたしと同じ症状ね。きっと花粉症だわ。お仲間ね」とでも言われたら、きっと納得してしまうだろう。

そして、ぼくが診察したとしても、お話しする内容はこれとたいした差はないのである。検査しなくたって、原因はスギの花粉に決まっている。

ぼくの医院は小児科以外にアレルギー科も標榜しているので、毎年二月、三月になると「花粉症になったみたいなんです」という大人の患者さんもたくさん見えるが、まず、「検査しますか?」と言って、反応をうかがうことにしている。

「ウーン、どうしましょう」と考え込むようだったら、ひと呼吸おいて、「かゆいですか。かゆければ花粉症でしょう、検査はいりません。治療だけしておきましょう。花粉症なら同じことがまた来年起こります」と話してすませている。

花粉症の人は目がかゆい。鼻の中もかゆい。耳の穴がかゆいという人もいる。アレルギーとはかゆいものなのである。

では、もし次の年に症状が出なかったら? もちろん、「花粉症です」との診断を撤回するのだ。そして、原因をつきとめる必要があればそのときはじめて検査をする。ムダな注射(採血)はしたくない。

これは他の多くの医師も同じ考えだと思う。それでも花粉症のアレルギー検査をするのは、おそらく、患者さんに診断を納得していただくための一種の「サービス」みたいなもので、「ほら、スギ花粉のIgE抗体がありましたよ。IgE抗体ってのはアレルギー反応の引き金をひくもので、血液中にこれだけ出るということは、目にも鼻の奥にも、体じゅうの細胞にスギのIgEが散らばっているんです。だから、あなたはスギの花粉アレルギーなんですよ。対策は薬を飲んでマスクをして……」

とまあ、こんな具合に数字を示されれば、「そうか、いやだけどマスクはしなくちやいけないんだな」と思っていただけるわけである。

ここであなたが、「でも、スギの花粉がこの鼻水の原因だっていう証拠にはならないでしょう」と食い下がると、耳鼻科などではスギ花粉のエキスを鼻の中にたらして、誘発試験をやってもらえるかもしれない。でも、それにしたって、百パーセントの証拠とは言えない。二週間前にひいたかぜをこじらせていて、そのための鼻水という可能性だってなくはない。

ぜんそくの検査も似たようなものだ。ほとんどの人がダニアレルギーの抗体をもっているので、検査しても意味がない。アトピー性皮膚炎もそうだ。くわしく原因を調べるのに検査が必要なことはあるが、アトピーかどうかは症状を見ただけで簡単に診断できる。

ただし、検査したほうがいい場合もある。卵や牛乳、小麦のアレルギーなどのようにアレルギーの「種類」と「強さ」によっては重い症状が予想される場合と、原因を細かく調べることで、より正しい解決策が得られる場合である。 

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